プロセスFMEAについて

工学的なこと
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プロセスFMEAを実施している企業は多いであろう。IATFには必須事項だしそれ以外にも大抵の顧客は要求してくるだろう。
しかしこのFMEA、実際に正しい方法で運用できている企業がどれだけあるのだうか?
恐らく多くの企業は間違った使用方法をされているのではないだろうか?
その間違った点というのが、故障モードと故障を間違えているところだ。
これを間違うと実際に行っているのは特性要因図の書き方を変えただけになる。
それとリスク優先度の計算だが一般的な10点法には問題がある。
そのほかにも難しい理由が様々あるが基本的なことを解説する。

プロセスFMEAとは

目的: プロセスFMEAの主な目的は、プロセスの中で何がうまくいかない可能性があるかを特定し、そのリスクを評価することです。これにより、問題を事前に予防し、品質や効率を向上させることができます。

プロセスFMEAの実施手順

ステップ1: チームの組織
最初のステップは、プロセスFMEAを実施するためのクロスファンクショナルなチームを組織することです。このチームには、プロセスに関連する異なる部門やステークホルダーが含まれます。例えば、自動車製造プロセスの場合、エンジニア、生産担当者、品質管理者、および安全担当者などが含まれるでしょう。
ステップ2: プロセスのマッピング
プロセスFMEAを開始する前に、対象となるプロセスを詳細にマッピングします。このプロセスマップは、ステップごとの詳細な情報、プロセスのフロー、および関連するデータを含むものです。これにより、チームはプロセス全体を理解しやすくなります。
ステップ3: 障害モードの特定
チームは、プロセス内で何がうまくいかない可能性があるかを特定します。これらは「障害モード」と呼ばれ、具体的な問題や障害を示します。例えば、自動車製造プロセスの障害モードとして、部品の欠陥、装置の故障、生産ラインの停止などが考えられます。
ステップ4: 障害の原因特定
各障害モードに対して、その原因を特定します。これは通常、「なぜ?」の質問を繰り返すことで明らかになります。たとえば、部品の欠陥の原因が不適切な材料供給である場合、それを特定します。
ステップ5: 障害の影響評価
各障害モードの影響を評価し、それが顧客、生産、コスト、安全性などに与える影響を記述します。一般的に、重大度、頻度、および検出性などの基準を使用して影響を評価します。たとえば、生産ラインの停止が顧客への配達の遅れにつながる場合、その影響を評価します。
ステップ6: リスク優先度の計算
各障害モードのリスク優先度を計算するために、重大度、発生頻度、および検出性を掛け合わせます。これにより、リスクの高い障害モードを特定します。
ステップ7: 対策の策定
リスクが高い障害モードに対して、対策を策定します。これには、問題の解決、リスクの軽減、およびプロセスの改善が含まれます。たとえば、部品の欠陥を減少させるために供給チェーンの品質管理を強化する対策を策定することがあります。
ステップ8: 対策の実施とモニタリング
対策を実施し、その効果を定期的にモニタリングし、必要に応じて調整します。これにより、リスクの管理とプロセスの改善が継続的に行われます。

プロセスFMEAは、品質向上、リスク管理、コスト削減、およびプロセスの効率向上を実現するための重要なツールです。上記のステップを通じて、問題の特定から解決までのプロセスを確立し、リスクを最小限に抑えます。 特に製造業、医療分野、航空宇宙、自動車産業などの分野で幅広く利用されています。

プロセスFMEAのリスク優先度を計算する点数付けの方法

プロセスFMEAのリスク優先度を計算するために、通常、リスク評価のための点数付け方法が使用されます。以下に一般的な点数付け方法の一例をいくつか紹介します。異なる組織や業界では、独自の点数付け方法を使用することがあります。

  1. RPN (Risk Priority Number) メソッド:
    • RPNメソッドは、プロセスFMEAで最も一般的に使用される方法の一つです。RPNは、リスクの優先度を計算するための単純な数式です。以下はRPNメソッドの計算式です。
      RPN = 重大度 (Severity) × 発生頻度 (Occurrence) × 検出性 (Detection)
      それぞれの要因について、0から10または1から10のスケールを使用して点数を割り当てます。重大度、発生頻度、および検出性が高いほど、RPNが高くなり、リスクが高いことを示します。
  2. SOD (Severity, Occurrence, Detection) メソッド:
    • この方法は、RPNメソッドと似ていますが、評価項目を略してSODと呼ばれることがあります。それぞれの要因について、0から10のスケールで点数を割り当て、これらの点数を重大度、発生頻度、検出性の順に掛け合わせてリスク優先度を計算します。
  3. Risk Matrix メソッド:
    • リスクマトリックスメソッドでは、重大度と発生頻度、または重大度と検出性などの要因を2つの軸にプロットし、セル内にリスクレベルを示す数値や色を使用してリスクを評価します。この方法は視覚的で理解しやすく、リスクの相対的な優先度をすばやく把握できます。
  4. カスタムメソッド:
    • 一部の組織では、自身のプロセスや産業に合ったカスタムメソッドを開発し、リスク優先度を計算します。この場合、特定の要因とスケールを使用し、リスク評価を行います。
      どの点数付け方法を使用するかは、組織やプロジェクトの要件に応じて異なります。ただし、一貫性と客観性を確保するために、明確な基準とスケールを使用することが重要です。また、計算されたリスク優先度に基づいて、リスクを適切に管理するための行動プランを策定することも重要です。

プロセスFMEAとFTAの違い

プロセスFMEA(Failure Modes and Effects Analysis)とFTA(Fault Tree Analysis)は、両方ともリスク分析の手法ですが、それぞれ異なるアプローチと目的を持っています。以下に、プロセスFMEAとFTAの主な違いを詳しく説明します。

  • 目的:
    • プロセスFMEA:
      • プロセスFMEAは、製造プロセス、運用プロセス、サービスプロセスなどのビジネスプロセスを評価し、潜在的なリスクや障害を特定し、その影響を最小限に抑えるために使用されます。主な目的は、プロセスの品質向上、効率向上、およびリスク管理です。
    • FTA:
      • Fault Tree Analysis(故障ツリーアナリシス)は、特定のイベント(通常は故障や事故)の原因と影響を分析するために使用されます。FTAは主に安全性分析や信頼性分析のために利用され、特定の故障イベントが発生する確率とその原因の組み合わせを評価します。
  • 対象:
    • プロセスFMEA:
      • プロセスFMEAは、ビジネスプロセスや製造プロセスなどの一連の手順やステップに焦点を当てています。主にプロセスの改善とリスク管理に使用され、プロセス内で何がうまくいかないかを特定します。
    • FTA:
      • FTAは特定の故障イベントに焦点を当て、その原因と影響を詳細に調査します。これは通常、複雑なシステムや装置の安全性分析に使用されます。故障イベントが発生する可能性とその要因を特定します。
  • 手法:
    • プロセスFMEA:
      • プロセスFMEAは主にチームの結集と経験に基づく評価に依存します。チームはプロセスをマッピングし、障害モードとそれらの原因を特定し、リスク優先度を計算します。
    • FTA:
      • FTAはイベントツリーの作成とブール論理に基づく定量的な分析に焦点を当てています。イベントツリーは特定の故障イベントを表し、その原因と影響の関係を論理的に表現します。
  • リスク評価:
    • プロセスFMEA:
      • プロセスFMEAでは、リスク優先度番号(RPN)などの指標を使用してリスクを評価します。主に影響、発生頻度、検出性などの要因に基づいてリスクを計算します。
    • FTA:
      • FTAでは、故障イベントの発生確率とその原因を組み合わせて、特定の故障イベントの確率を評価します。ブール論理を使用して異なる要因が結合することによるリスクを評価します。

要約すると、プロセスFMEAはビジネスプロセスや製造プロセスの品質と効率を向上させるためのリスク評価手法であり、FTAは特定の故障イベントの原因と影響を詳細に分析するための安全性分析および信頼性分析の手法です。どちらも異なる文脈で使用され、異なる目的を持っています。

プロセスFMEAが難しい理由

プロセスFMEAの実務は非常に難しいが、その理由は次のようなことがあります:

  1. 不適切なチームの構成:
    • プロセスFMEAはクロスファンクショナルなチームで実施されるべきですが、適切な専門知識を持つメンバーが不足している場合や、プロセスに関係のないメンバーが参加している場合があります。これは障害モードの適切な特定と評価を妨げる可能性があります。
  2. 障害モードの不十分な特定:
    • プロセスFMEAでは、障害モードを正確に特定することが重要です。しかし、十分なリサーチやデータ収集が行われず、重要な障害モードが見落とされることがあります。
  3. 影響の不適切な評価:
    • 障害モードの影響を評価する際に、過度な一般性や主観的な評価が行われ、正確な情報に基づいた評価が行われないことがあります。これにより、リスクの正確な優先順位付けができなくなります。
  4. 対策の不適切な策定:
    • プロセスFMEAで特定されたリスクに対して、適切な対策が策定されないことがあります。対策が具体的でなかったり、効果的でない場合、問題の解決が適切に行われません。
  5. 対策の実施とモニタリングの怠慢:
    • プロセスFMEAの結果に基づく対策が適切に実施されず、モニタリングが怠慢になることがあります。これにより、リスクの管理とプロセスの改善が不十分になります。
  6. 文書化の不足:
    • プロセスFMEAの結果や対策が適切に文書化されない場合、情報の共有やトラッキングが難しくなります。文書化はプロセスの透明性と改善のために重要です。
  7. 適切なリーダーシップの不在:
    • プロセスFMEAを適切に指導するリーダーシップが不足している場合、プロセスFMEAの進行が混乱し、効果的な結果が得られないことがあります。
      これらの誤った作成事例を避けるためには、適切なチームの構成、詳細な障害モードの特定と評価、客観的な影響評価、対策の慎重な策定、実施とモニタリング、文書化、およびリーダーシップの重要性を認識し、それらの要素を確保することが重要です。

以上FMEAについて解説したが、下記のサイトで実用的なものが詳しく解説されているので是非参考にして頂きたい。
TQM 総合品質管理
https://gloomy-ktqm-labo.ssl-lolipop.jp/