タイで仕事をしていると作業員の質が日本と比べて劣っていることに悩まされる。
製造業の作業員は地方出身者が大半を占めており(カンボジア人などの外国人もしかり)、英単語はおろかタイ文字ですら理解できるかどうか怪しいこともある。
まだまだ教育レベルの水準が低いこともさることながら、価値観が日本人とは大きく異なっているということもある。
これはタイのど田舎に行って彼らと1日生活を共にするとよくわかる。
日本人にはゴミにしか見えないものでも彼らにとっては立派な生活物資である。
そんな彼らに例えば日本式の5Sを理解させようとしても至難の業である。

牛丼屋の作業

タイにも日本の牛丼チェーン店が進出して久しい。
バンコクのみならずシラチャの街にも数件存在する。
メニューも豊富でタイ人向けにアレンジされているようである。
そんななかに「うな丼」があって、これがなかなか美味しいのでよく食べに行っている。
しかし少し気になることがある。
ご飯にかかっているタレの量にばらつきが大きく、たまに半端なく多いときがあり、とても食べることができないことがある。
さらに本来であれば山椒パウダーを一緒にだすことになっていると思われるのだが、これも出てきたり出てこなかったりする。
外食チェーンの現場作業というものは徹底的にマニュアル化されていると聞く。
基本的に現場作業のほとんどはアルバイトが担っているわけで、作業が細かくマニュアル化されていないと日々入れ替わりのするようなアルバイトでは到底作業にならないわけである。
この辺はかの有名なハンバーガーチェーンでは徹底されているそうである。
業務のほとんどはアルバイトによって成り立っているわけであるから当然である。
牛丼チェーンとて当然マニュアル化されているはずであるが、かなりほころびが目立ってしまっている。
従業員を観察してみると、小規模店舗ではローカルスタッフ2~3名でまわしているようである。日本人の姿は見たことが無い。
製造業の標準作業
ひるがえって製造業のマニュアルというものは条件表や標準作業という形で決まっている。(会社によって呼び方はそれぞれであろうが)
細かいところでは作業分析がしっかり行われており、例えば「左手でA部品を何個とり、何歩移動して右手でスイッチをおす」と言った様な作業が決められており、サイクルタイムもしっかり決まっていて、生産進捗版に計画数と実績が表示されて常に管理されているといった具合である。
これがしっかり守られている間はいいのであるが、時がたつにつれて変わっていってしまうのが常である。
何か問題が起きて対策したり、改善業務で標準が書き換えられていくことになる。
問題はこの際に日本人のチェックが確実に行われているかという点にある。
各現場に駐在員が配置されているのであればまだ大丈夫かもしれないが、たいていはそうはいかない。
必要最小限の人員でしかもトップ管理層しか配置されていないはずである。
そうなるとタイ人の間で勝手に変更されていることがしばし発生する。
しかもこの変更はおおかた、良かれと思って行われているが、実は良くない方向にいってしまうことが多い。
ローカルスタッフでは製品や製造工程の技術と知識が不足しているがためである。
それと危険予知という概念が薄いような気がする。
これは交通事故の死傷者が突出して多いことかもわかる。
タイの気候もあってか、こうしたらこうなるという観点があまりないのかもしれない。
駐在員の重要な仕事とは
こうした観点からするに、駐在員に求められている重要な仕事とは、
- 標準を徹底的に作り込む
- その標準を徹底的に守らせる
- 勝手な変更をさせない
これには製品と工程の知識と技術を備えたうえで、現場の隅々まで監視できることが求められるので、駐在員の選定には相応の人材が必要になる。
昨今リモートワークがもてはやされているが、現場現物の管理は在宅では難しい。
むしろそれができるのであれば日本からリモートワークをすればいいわけで駐在員などというコスト要因は不要になっているだろう。